9割の人が勘違いしている「良い姿勢の意識」

9割の人勘違い

 

「良い姿勢をしよう」「姿勢を正そう」と思った時、どんなことを意識しますか?

良い姿勢をする際に意識することといえば、「背すじを伸ばす」「胸を張る」といったことが一般的ですが、最近の姿勢の専門家が発信する情報では、「背すじを伸ばしてはいけない」といったものが多数出ています。

ここでは、

  • 専門家が言う「背すじを伸ばすな」ってどういうこと?
  • 世間の皆さんは実際良い姿勢をどうやってしてるの?

ということについて説明します。

参考文献:和久田佳代.姿勢の整え方:「背すじをのばす」ではなく「腰を立てる」.聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University 14, 50-60, 2016-03-31

「背すじは伸ばすな」について

以下は、近年(参考文献では2006年~2015年)発行されている書籍・文献で、「背すじをのばす」ことを否定している記述をまとめたものです。

安定したよい姿勢は、背筋をのばし、胸を張って、指先がしっかり伸びている、いわゆる「気をつけ」姿勢ではないことは確かである。
天野勝弘(2006) 立つ.日本養生学会 健康なからだの基礎 : 養生の実践.市村出版,54-66.

胸を張って、背筋はピンとキレイに伸びているように見えます。…長時間は持ちません。無理に上体を仰け反らせているので、次第に疲れてきます。
小池義孝 (2011) ねこ背は治る ! : 知るだけで体が改善する「4 つの意識」.自由国民社

背筋はのばさない、胸を張らない
矢田部英正 (2012) からだのメソッド : 立居振舞いの技術.筑摩書房

『背すじを伸ばすな-姿勢のメカニズムとその治し方-』
山下久明 (2012) 背筋は伸ばすな : 姿勢のメカニズムとその治し方.にしきデンタルオフィス

「普通の姿勢=背すじをピンと伸ばした姿勢」という思い込みが強い背すじを伸ばそうとしすぎて(つまり、緊張しすぎて)、結果、さまざまな全身の不調を生み出している
佐藤厚 (2015) 健康になりたいなら、ちょっと猫背が実はいい.学研パブリッシング

「胸を張り、腰を反り、あごを引いて、背筋をピン!…」これらを「正しい姿勢」と教わってきた これらの姿勢を続けると、体はガチガチに固まります。正しい姿勢 = 苦しい姿勢と思われてしまった
若林理砂 (2015) 痛くない体のつくり方 : 姿勢、運動、食事、休養.光文社

背筋がピンと伸びて胸を張った姿 ( 中略)横から見ると、背中が反った状態です。ムリに身体をまっすぐにしょうとすると、胸や背中など、本来力を入れる必要のない部分の筋肉が緊張してしまいます。
廣戸聡一(2015)健康な身体はつちふまずが知っている.幻冬舎

こちらの表から、専門家が「背すじをのばす」を否定する理由をまとめるとこんな感じに。


よっしゃ、いっちょエエ姿勢しよか

って時に

  1. 「背すじを伸ばさなきゃ」という思い込んで
  2. 背すじをピンと伸ばした胸を張った姿勢をする(背中が反った状態)
  3. 本来力を入れる必要のない部分の筋肉が緊張し身体はガチガチに

このため、

苦しい、つらい、なんか身体痛い

と、なる。


「背すじをのばす→反り腰=良い姿勢」という認識は一般的ではありますが、とても身体に優しい”良い姿勢”ではないということを、専門家は指摘しています。

世間一般の姿勢意識

ここまでで、専門家の言い分をまとめました。

次は実際に世間の人々はどのように”良い姿勢”を考えているのか、複数の調査結果から見てみます。

9割の人が「背すじをのばす」を意識

以下は、「良い姿勢をする時に意識すること」をアンケート調査した結果です。
一つ目のグラフが中学生に、二つ目のグラフが女子大学生に聞いた結果となっています。

中学生意識9割
野井真吾 (1996) 姿勢教育の基礎的研究 : 中学生が意識している”よい姿勢”について.日本体育大学紀要,25(2):91.

女子大学生意識9割
塩田徹・森尻強・佐藤幹夫 (2007) 女子大学生における姿勢矯正の意識と姿勢変化の 関連について.作新学院大学紀要,17:91- 103.

9割以上の人が、良い姿勢をする時に「背すじをのばす」ことがわかりますね。

また、「胸をはる」も、9割近くの人が意識しているようです。

どちらも専門家が否定している方法です。

良い姿勢を意識しても良い姿勢になっていない

また、別の調査では、「いつもの姿勢」と「自分の考える最もよい姿勢」をするように指示された時の姿勢を評価したもので、結果は以下の通りです。

普段と意識時9割
塩田徹・森尻強・佐藤幹夫 (2007) 女子大 学生における姿勢矯正の意識と姿勢変化の 関連について.作新学院大学紀要,17:91- 103.

緑が「いつもの姿勢」で、赤が「良い姿勢を意識した時」となっています。

この結果をみると、普段の姿勢は猫背が多いですが、良い姿勢を意識した時には反り腰が大幅に増えているのがわかります。

それぞれの調査結果をまとめると、こんな具合。

  • 良い姿勢を意識すると、「背すじをのばす」「背」を意識する者が多い
  • 良い姿勢を意識しても、良い姿勢になっているとは限らない

つまり、多くの人は良い姿勢をしようとしても、背中を意識し過ぎて反り腰姿勢となり、結局悪い姿勢になっている、ということですね。

意識すべきは「背」ではなく「腹」

「背」を意識することで、悪い姿勢をしてしまう。
では、結局良い姿勢をしたければどこを意識すべきなのか。

その答えは「腹」。腹筋です。
腹筋の重要性は、下の記事にまとめています。

腹筋と姿勢_2
なぜ腹筋が良い姿勢に大事なのか、わかってますよね?

左:腹筋オフ右:腹筋オン (1)

背筋は上半身を立たせるだけで必要十分に働いています。

背筋がそれ以上頑張ると腰を反らせてしまうので、背筋ではなく腹筋を使って上半身をバランスよく支えることが、良い姿勢をするポイントになります。

そしてその「腹」を働かせるのに効果的なのが「おへそ意識」です。

姿勢おへそ_1
【解説】良い姿勢ってどんなの? おへそ意識ってどうやるの?

まとめ

専門家が「背すじをのばすな」とアドバイスする一方で、世間のほとんどの人が「背すじをのばす」ことを意識しているのが現状です。

身体に負担をかけないように姿勢を良くしよう意識としていることが、身体をより痛めつけることになっていることを、9割の人がわかっていないのは問題ですね。

「姿勢をのばせ」というフレーズは、昔から姿勢改善の合言葉のように使われて世間一般に広く知られている、言わば”常識”ですが、これが近い将来、”かつての間違った常識”として認知されることを願います。